新しいサーバに移転したりするとおいしい帯域とディスク容量があまっちゃってしょうがないわけで、なんだかこういう情報を集めてみたりするわけです。
日本のネットラジオをとりまく状況については、日経BPのデジタルARENAに連載されていたコラム、山崎潤一郎のネットで流行るものが参考になります。(現在コラムは氏の個人サイトにて継続中)
- 日本でネットラジオが育たないワケ (2002年9月18日)
- 誰でも合法ネットラジオ!「Live365.com」 (2003年11月10日)
- “誰でも合法ネットラジオ”は日本でも実現する? (2004年1月28日)
- 日本で“誰でも合法ネットラジオ”を実現するには (2004年2月4日)
SHOUTcastを例にとってネットラジオの概念を非常にてきとーに説明すると、ネットラジオの送信と受信には以下の三つのプログラムが必要になります。
- 音楽CDやmp3ファイルを再生したり、マイクからDJの声をひろったりするためのスタジオ用プログラム
送信時のビットレートを決めているのがここ。ふたつのラジオサーバに向けてビットレートが異なる出力を送ることで、おなじ楽曲の高ビットレート版と低ビットレート版を同時に放送することもできます。
- スタジオ用プログラムから送られてきた音声を受信者にむけて放送する送信所用プログラム。
一般に「ラジオサーバ」と呼ばれているのはこの部分で、スタジオ・受信機プログラムはどちらもこのサーバに接続するかたちで動作します。SHOUTcastの用語では、スタジオ用プログラムはソース、受信機はクライアントと呼ばれています。
一度に接続できる人数を決めているのもこの部分で、現在放送されている曲や最近放送された曲をWebブラウザで読めるかたちで出力する機能も持っています。
- 送信所から情報を受け取って再生する受信機用プログラム。WinAmpやReal Playerがこの機能を持っています。
スタジオ・送信所・受信機の三つはそれぞれ独立していて、海外サーバ上の送信所に自宅PCのスタジオからアクセスしてもいいし、スタジオと送信所がおなじサーバ上で動いていてもかまいません。ひとつのマシンでスタジオと送信所を動かして、そのおなじマシン上で音楽を受信することもできます。そんなことをしても特にうれしくないので普通はやりませんが。
また、SHOUTcastの場合、さまざまなOS用のスタジオ・送信所・受信機プログラムが用意されているので、Windowsのスタジオクライアント (WinAmp + SHOUTcast DSP Plug-In) からLinuxサーバのSHOUTcastサーバに接続して放送をおこなうこともできるし、ひとつのFreeBSDマシンに音楽ソースとDSP Plug-InとSHOUTcastサーバをまとめて配置して走らせ、あとはまったく人の手を介さない全自動のシャッフル放送ラジオを開設することもできるわけです。
IcecastはSHOUTcastと互換性を持ったソフトウェアです。GNU General Public License Version.2 の元にソースコードが公開されています。僕はまだ使ったことがないので、機能や使い勝手の差はよくわかりません。
で、いまのところ、日本で合法ネットラジオを開設するには、米国のサービスを利用するしか手がありません。このようなサービスはすでにいくつか開設されていて、それぞれに方法が異なります。
- Live365.com
Live365.comは、スタジオと送信所の両方を兼ねるサービスです。自分だけのラジオ局を開設するぜ! という野望に燃えるラジオ野郎はLive365.comのサーバに手持ちの音楽をアップロードするか、自宅のスタジオプログラムからLive365.comのサーバに接続してデータを送信し、ユーザはLive365.comのサーバに接続するかたちでラジオを受信します。
Live365.comは、共同ライセンスを取得したストリーミングラジオ局専用のホスティングサービスとも言えます。ストリーミングに特化したホスティングサービスは数を増やしつつあるので、Live365.com型のサービスの数もこれから増加してゆくのかもしれません。
ASCAP, BMI, SESEC, SoundExchangeでライセンスが管理される楽曲が使用できます。料金は月額$7.45からはじまりますが、プロ用パッケージの料金は$5,000以上まで上昇します。
- SWcast
SWcastはスタジオも送信所も提供しませんが、参加するラジオサーバへの接続をいったんすべてSWcast.netのサーバが仲介することによって、"Joint Performance Licensing Program"と呼ばれる協同的ライセンスを可能にしています。スタジオや送信所用のサーバは参加者各々が用意し、サーバと帯域の料金も各自が負担します。
参加者が月ごとにSWcast.netに支払う料金は、そのラジオ局の総聴取時間 (total listening hours, TLH) とラジオ局の得た収益によって決まります。総聴取時間は、リスナーがそのラジオ局を聴いていた時間の月ごとの総計です。30日間24時間連続で放送していた場合でも、リスナーがずっと0人であれば、その月のTLHは0になります。ラジオサーバへの接続はかならずSWcast.netを仲介しておこなわれるので、TLHの値はリアルタイムで変動します。
ASCAP, BMI, SoundExchangeでライセンスが管理される楽曲が使用できます。いまのところ、SESECがライセンスを管理する楽曲は使用できません。料金はTLDと収益によって$12.95 〜 $54.95まで変化します。
サーバを各自で用意する必要がある、月ごとに収益を報告する必要があるのがわずらわしいところですが、自分でラジオサーバを立てる能力を持った人にとっては、安価にラジオ局を開設して、しかも収益をあげることも可能なシステムがひらけているわけです。
ただし、Live365がなぜ日本国内でも合法と見られるかを考えると、おそらくスタジオやラジオサーバは海外にあったほうがよいのでしょう。それにリスナー数が二番目に多い局が日本のポップスやアニメソングを扱う局であるのがなんだかすこしアヤシげです。
どちらのサービスを利用するにしろ、利用者はDMCAで定められた条項にしたがって放送をおこなわなくてはなりません。DMCAの規約については上記のコラムに和訳がありますが、これらのサービスを利用したいという方は、かならず自分でこれらの条項を確かめたうえで契約を結んでください。コラムに記載されているのはLive365のルールを和訳したものですが、SWcastのルールも文面は異なるものの内容は同じです。
……ただし。山崎潤一郎氏のコラムによると、JASRACはLive365による個人放送局も違法と認識としているのだそうです。Live365が駄目ということは、SWcastだって当然駄目です。つまりJASRACの見解に従うと、日本で個人が合法インターネットラジオを開局する方法はひとつも存在しないのです。
「違法」ネットラジオを開局している人やP2Pで新しい楽曲を探している人のなかには、これらの手段を合法的に済ませられるものならそうしたいと思っている人が少なからずいます。これは間違いない。だから、ネットラジオに合法的なライセンスを与えることは、権利者の新しい利益を確保し、ラジオを通じてその曲の存在を知ったリスナーがオンラインやオフラインのショップでCDを購入することでソフトの売り上げも伸び、現状P2Pネットワークに蔓延している違法コピーから音楽ユーザーの一部をとりもどす道でもあるはずなのです。
ネットラジオやP2Pネットワークのユーザーが膨大であるなら、それはそこに潜在的な市場があるということです。一部の人を検挙して槍玉にあげ、規制と恐怖で状況をコントロールしようとするより、こちらとあちら両方が納得できる価格と方式でライセンスを提供して利益をあげようと考えるのが商売人としての正道だと僕は思うのですけど、日本で著作権の管理をしている人たちのなかにそういう発想をする人はいないのでしょうか。つまらないなあ。