『夜に虚就く』──掘骨砕三

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【こんなのどうでしょう?】かんなぎ (5) (REX COMICS)
ジャンル:
まんがかんそうぶん
シリーズ:
エロまんがかんそうぶん
種類:
成人向け
最終更新:
2007年02月10日 23時39分
シリアル:
2006-02-21-08
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  • ほりほね さいぞう(2006-02-10)
  • ¥ 980
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夜に虚就うろつは、2006年2月に三和出版から刊行された掘骨砕三の単行本(ひらがなでほりほね さいぞう名義の単行本や、小瀬秋葉鉈川紘という名義が使用された作品もあります)。

2002年に刊行された下水街の続編に当たる作品で、サブタイトルは下水街汚物譚なかば。工業都市の下に、汚染された水が流れる下水道で接続されたもうひとつの街があり、そこでは地上とは異なるルールで構成された生物たちが、地上とは異なるルールの生活を営んでいる、というコンセプトのシリーズです。

前書きや後書きで触れられているように、シリーズとしては12年以上続いていることになるうえに、単行本1巻分にあたる物語がまだ残っているのだそうで、ここまで来るともはやライフワークと呼んでも良いのかもしれません。

線はやわらかい丸みのあるユーモラスな感じで、表現はときに精緻。ヌキ用に使用するのは個人の自由ですが、難易度はかなり高めです。

作品の傾向ははっきりとグロ。切った張ったで血や内臓がどばぁ系ではなく、ちんぽが偶数本とか乳房が奇数個という畸型・改造の範疇に属します。体内で長虫をたくさん飼育する少女(肉体のあちこちに出入り用の穴がある)、半身を覆うおできが女体化して意思を持ち、大小さまざまの女の子と繋がったまま生活する少年、あるいはもっと端的に、極度に肥大化したペニスから小型のペニスがぽこぽこ誕生、とか、できものが全身にひろがって身体中がいぼいぼ、など、見ていて不快感を催す描写も多々あります。

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少女の体に共棲する虫たち。存在としてはグロテスクなはずなのに、造形としてはどこかユーモラスです。

なかでもいちばん異彩を放っているのは、人間となにかほかの種が融合したキメラ。このキメラ生物が、不気味ではありながら、同時にある種の完成された美しさを発揮しているのが、「下水道」世界の魅力のひとつです。しかし、最大の特徴は、グロテスクを売りにした物語でありながら、すべての作品がハッピーエンドである、という部分。悪趣味で突出しながらも、つねに幸福感がほのぼのと通底するこの空気こそ、「下水道」世界、ひいては掘骨砕三作品の最大の魅力と言えます。

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上の街から攫われて人魚の卵を飲み、人間以外の生物へ変貌してゆく女の子。それでもいちばん気になるのは、いっしょに攫われてきた男の子と人魚の女性との関係なのです。

虫を体内で飼ったせいで畸型化する少年、虫に刺されて自身も虫に変態する少女、上の街からさらわれて、二度と元に戻れないキメラへ変身してゆく少年少女──しかしそこに陰惨さはありません。人間以外の異形に変化したにもかかわらず、そしてその変化は不可逆であるにもかかわらず、彼または彼女たちは悲しみで泣きわめくことも、絶望で暗く沈むこともなく、あっけらかんと順応して、不思議なほど充足しています。

石の下に潜む微細な虫たちや深海に棲む生物たちの世界、熱水プルームの生態系が、人間から見ると理解しがたかったり、あるいは悲惨に思えるにもかかわらず、彼らは彼らなりに安定しており、繁栄しているのと同じように、下水道の住人たちも彼らなりに充足している。地上とはまったく異なるけれども、そこには彼らなりの価値観があり、経済活動があり、人生があるのです。読んでいるうちに、地上に住む我々より、暗く湿った地下世界に棲む彼らのほうがよほど満ち足りているのではないか──とふと考えてしまうくらい、しあわせな世界が。

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祭りの夜、よんどころない事情で夜の学校に忍び込んだ少女。奇妙な美しさのある構図です。
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校舎の上に見つけた不審な影の正体は……?
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見たこともない巨大な生物でした。おびえて動けなくなり、またも粗相をしてしまう女の子。
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下水のなかへ彼女を攫った「彼」の目的は、彼女を「御嫁賛」にすることでした。

その意味では、これはグロを売り物にした下品なエロ漫画であるのと同時に、空想博物誌と同種類の作品であるとも言えます。これこそサイバーパンク、スチームパンクに続くスウェッジパンクである、と主張して、SF好きの友人に読ませて反応をうかがうのも面白いかもしれません。

収録作は蛞猫(4P, カラー収録)、下し屋虫籠便所虫陰間の春疣に這う虫泥魚少女人形夜に虚就く(前編・後編)。巻頭に折り込みカラーピンナップ1P(COMICアイラデラックスvol.26が初出)、巻頭に前書き、巻末に後書き(作品紹介)がそれぞれ1Pあり。カバー下は上の世界よりもグロ度倍増となっております。