Big Huge Gamesの歴史リアルタイムストラテジーゲーム、Rise of Nationsに、ギリシャ民族の固有ユニットとして登場した(→例)。このときは調査が足りず、「同行者/連合騎兵?」のように訳を併記してお茶を濁した。
当時の紹介記事にアレクサンドロス大王と関わりがあるという記載があったことを思い出して、今回あらためて"companion alexander"をキーワードに検索してみると、About.comで次の記述を見つけた。
- Companion Cavalry of Alexander the Great (About.com)
"Companion Cavalry"
定義:アレクサンドロス大王率いるマケドニア軍において、Comanion cavalryは8騎兵大隊(1騎兵大隊は225騎から構成される)をひとつの単位として構成されていた。このComanion cavalryは、フィロタスの指揮のもと、グラニコスの戦い(BC334, 6月)、ティルスの攻城戦、ガウガメラの戦い(BC331, 8月)、(中略)などの出来事で重要な役割を果たした。BC330の12月、フィロタスが反逆罪で逮捕され処刑を受けると、彼の率いていたCompanion cavalryは、経験の少ないヘファイスティオンとクレイトスに分割して引き継がれることになった。
ただし、ここにある「Hetairaiとしても知られる」との記述は誤り。Hetairaiは「女友だち」または「情婦」の意の古代ギリシャ語で、ふつうは教養ある高級遊女のことを指す。なぜ遊女? と混乱しつつも情報を集め、アレクサンドロスをそそのかしてペルセポリスを炎上させたタイスにたどりついたりもしたものの、騎兵との関わりはまったく出てこない。あとでわかったが、これはAbout.comのライター氏が名詞の性を間違えていたのだ。(まったく!)
ともかく、アレクサンドロスの"Companion"は、"Companion cavalry"のフレーズで有名らしい。たしかにRoNでも、Comanionは重装騎兵ユニットの代替だった。こちらで検索してみると、なるほど、それっぽい結果がずらずらと出てくる。
- Companion cavalry (Wikipedia)
- Companion Cavalry (Wiki Classical Dictionary)
Wiki Classical Dictionaryの記述によると:
Companion Cavalryは、一般に、フィリッポスとアレクサンドロスの軍隊における精鋭騎兵部隊を指す名前である。hetairoi(≪文≫ 'Companions')のギリシャ名で知られており、元来は貴族階級から選ばれた、王の親しい友人たちから構成されていた(中世ヨーロッパの騎馬騎士や、おそらくもっと正確には、アングロサクソン王族の親衛隊に似ている)。
とある。"Companion(s)"はギリシャ語"hetairoi"の英訳だったのか。そういえば、Civilization IV: Warlordsのアレクサンドロス大王シナリオにも、"hetairoi"という騎兵ユニットが出てきた。(※確認のためにWarlordsのシヴィロペディアを参照してみたら、"hetairoi"の項にちゃんと括弧書きで"Companions"の記載があった。不覚である)
では、と当たりをつけて「ヘタイロイ」で日本語検索してみると、そのものずばりの結果が出てくる。
- マケドニアの騎兵 (HISTORIA)
アレクサンドロス大王の東征中に行われた数々の戦いにおいて戦いの決定的な局面でヘタイロイ騎兵の活躍がかなり書き残されている。「ヘタイロイ」という名称はマケドニア貴族のことを指す言葉でもあるが、彼らは騎兵として従軍することを求められていた。そのような者によってヘタイロイ騎兵隊が構成されており、東征軍には1800騎のヘタイロイ騎兵が含まれていた。ヘタイロイ騎兵は兜と胸当てを身につけ、武器としては長い突き槍(クシュストン)と剣を装備していたという。彼らは楔形の隊形を組み敵陣の隙間に突撃したり、側面や背後に回り込んで戦った。
- 自由のための「不定期便」の第647回、「国家の起源とその本質(7)」から、原随園著アレクサンドロス大王の父の引用
マケドニアにおいては、多年の武力征服によって、上下マケドニア地方がともかく統合されて一国を形成し、被征服地方の貴族たちは王の下に隷属していたという差違がある。またホメロス時代に仲間(ヘタイロイ)というものが、食卓仲間であり戦友であったのに対して、マケドニアにおいでは、王の下に隷属する武士がヘタイロイであり、その中からさらに王側近のヘタイロイが選ばれて顧問となっていたのであった。
(中略)
アレクサンドロス大王の頃にはさらに発達して、ガウガメラの戦の時には(前332 年)、へタイロイは八部隊に分れており、各部隊はおよそ三百騎から編成されていた。またアルベラの戦の時には(前331年)、エリミオテス、オレスティス、リンケスティスなどの地方別に組織していたのである。その他に『王の部隊(パジリケイレ)』とよばれる特別の部隊をつくった。騎兵の中でも一番精鋭な部隊であったといわれるが、単に王護衛を目的としたものではなかった。
平凡社の世界大百科事典では、「マケドニア」の項に「ヘタイロイ」が出てくる:
フィリッポス2世は兄の戦死後即位し,農地を開発して自由農民の生活を安定させ,彼らを長槍(サリッサ)を武器とする強力な歩兵兵団に組織・訓練し,小貴族から成る騎兵兵団と組み合わせて進んだ戦術を開発した。その歩兵をペゼタイロイ(歩兵ヘタイロイ),騎兵をヘタイロイと呼ぶ。ヘタイロイとは元来,〈友〉の意味で王とも同格の大貴族団の称号であった。この狭い範囲から一般自由民までヘタイロイ称号が拡大されたことは,全マケドニア人と王との関係の緊密化を示す。元来のヘタイロイは対外進出による土地や財産を媒介として王家の軍事・行政組織の基盤となった。
長々と遠回りしたが、結論としては、この場合のcompanionはヘタイロイ、ゲームのユニットとして登場する場合はヘタイロイ騎兵やヘタイロイ歩兵(ペゼタイロイ)と訳すのが正しいことになる。
マイクロソフトから発売されたRise of Nations日本語版では、companionは「ギリシャ騎兵」と訳されていた。Civilization III: Conquestのメソポタミアシナリオには、Companion Infantryというユニットが登場するが、サイバーフロントから発売された日本語版では「集団歩兵」と訳されている。Age of Empires系の一作品であるAge of Mythology日本語版には、その名の通り「ヘタイロイ」という名のユニットが登場するが、これは英語版からHetairoiというユニット名だった。Companionという英語からヘタイロイというギリシャ語に到達するのは、プロの翻訳者にとってすら至難の業であるようだ。