アニメひだまりスケッチで面白いのは、この作品が徹底した省エネアニメである点にある。省エネアニメというのは、実物取り込みや動画枚数の削減、同じ絵の再利用、背景の省略など、つまり色々な部分で手間をセーブして制作されていると言う意味ね。
それなのに、ひだまりスケッチは安っぽく見えない。まったく安っぽく見えないと言ったら言い過ぎだけど、制作にかけられたであろう手間に比べると、わりと良い成績で安っぽく見えない。それがすごく面白い。
四コマ漫画のアニメ化はえてして難しい。作品が視聴率や関連商品の売り上げの面で成功を収めた場合でも、原作ファンが満足できるものはなかなか出てこない。理由はさまざまに考えられるが、大きな要因のひとつは、四コマ漫画をアニメ化する場合、なにかを足したり、あるいは間を埋めたりという必要性に、制作側がどうしても迫られるからだろう。
黒板ネタに代表されるぱにぽにだっしゅ!の「遊び」は、一部で人気を博したけれど、オリジナルから乖離したものではあるし、あずまんが大王にところどころ挟まれたオリジナル要素は、原作ファンを落ちつかない気持ちにさせた。初回の「つっくりましょー つっくりーましょー」で、なんとも言えない微妙な気持ちになった人は多かったはずだ。
ひだまりスケッチの驚くべきところは、この、「なにかを足したり、間を埋めたり」という作業がおこなわれていないところにある。まったくおこなわれていない、と言ったらここでも言い過ぎになるが、ほかの作品ほど熱意をこめておこなわれてはいない。あるいは自己主張が激しくない。
ではどうされているか、と言うと、ひだまりスケッチでは、間が引き延ばされているか、あるいは間が間のままで放置されている。そんなことをしたら手抜きっぽく見えるんじゃないか、と訊かれたなら、それは当然部分的にはそう見える。しかし、ひだまりスケッチでは、その「間」をアートとして演出することで、視聴者の印象をポジティブな側に持ち上げることに成功しているのだ。
これは、ひだまりスケッチが、美術科を舞台とした作品だからこそ可能になった手段だろう。そしてこの、印象に残るけれども適度に威嚇的でないアート的な手法は、月詠やぱにぽにだっしゅ!、ネギま!?のオープニング・エンディングでシャフトが培ってきた手法の延長線として、ごく自然に納得できるものでもある。ひとつの結節点として見たときに、それがすごく面白い。
もうひとつ、ひだまりスケッチは、掲載誌まんがタイムきらら系列にいくつかある、ほかの美術科、あるいは創作系四コマ漫画の最初のアニメ化例としても興味深い。
ときに焼畑的と揶揄されることのある、漫画やライトノベル作品に原作を求めるアニメ業界のありかたは、近年、1シーズンに放送される作品数が急増しているせいで、サイクルが加速し、原作になり得る作品のプールが減少しつつある。
これは、いっぽうでは、オリジナルのアニメ作品の増加に繋がる可能性を孕んでいるので、すべての面で悪いとは言いきれない。また、うまく成長すれば、最近創刊が相次いでいる新漫画雑誌が、あらたな原作供給先として機能しはじめる可能性もあるだろうが、そのためにはまだ時間が必要だろう。
このとき、あずまんが大王の成功を受けて増殖した、いわゆる「萌え四コマ」系雑誌が、時間的な先行と作品数の多さから、あらたな原作供給源として注目を集めるのではないか。とくに、きらら系列は、魅力的なキャラクターと高いストーリー性をそなえたきゆづきさとこの棺担ぎのクロ。〜懐中旅話〜など、アニメ化作品として有望な作品をいくつか抱えている。
しかし、連載が継続中であることを考えると、棺担ぎのクロ。のストーリー性の高さは敬遠材料でもある。そうなると、おなじきゆづきさとこの作品であり、そしてひだまりスケッチとおなじ美術科漫画である、GA 芸術科アートデザインクラスが、次のステップとしてアニメ化原作に選ばれる可能性は、少なくないように思われる。
「萌え四コマ」と言えば、一時はほとんど蔑称に近い扱いを受けていた存在だが、ここ1〜2年で、我々は認識をおおきく改める必要に迫られるかもしれない。そのための試金石として、アニメひだまりスケッチの成功に期待したい。
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参考
- アニメひだまりスケッチ公式サイト
- 芳文社のまんがタイムきららWeb
- アニメーションスタジオSHAFTの公式サイト


