2007年2月に発売された、ヤングチャンピオン烈Vol.5掲載の読みきり作品。行楽がてら、山奥で養鯉場を営む友人の元を訪れた主人公の男性は、ダムの脇にある友人宅の玄関で、不思議なものを目にします。水の張られた大型のタライの中で泳いでいたものは、どこからどう見ても……。
成人向け雑誌でグロ要素の極めて強いファンタジー作品を数多くものしてきた掘骨砕三の、ヤングチャンピオン烈初掲載作品。よく知らないけど、一般誌には初進出かな? 次号予告にも名前が載っているので、このまま定住しそうな気配。
秋田書店は昔からエロ漫画の人をちょいちょい拾い上げてきたところだし、親戚のチャンピオンREDなんか、たぶんヤングチャンピオン烈よりも対象年齢の低い一般誌のくせに、恐れと自重を微塵も感じさせないエログロ路線を突っ走っているし(えーと、タイミング良くというか、ちょうど今月号が大増量月です)、そういう意味ではわりあい納得できる流れですかね。
ただ、掘骨砕三の場合、本人が望んで進出したというより、昨年あたりから彼の原稿を掲載していた雑誌がどんどんつぶれてしまい、描く場所がなくなって、どちらかというと仕方なしに一般誌に押し出されたという印象。ヤングチャンピオン烈がはたして世間一般的な意味での一般誌にあたるのか? と訊かれると、まあ、その。なんだ。困るけど。
この人のファンが一般誌進出を喜ぶか、と訊かれると、これもまた微妙なところで、それはそれで喜ばしいことだけど、できることなら制約の少ない媒体で思うさま好きなものを描いてほしいと願っている人が、けっこう居そうな気もします。ファンが増えるのは嬉しいけど、お気に入りの「秘密」の作家がみんなの目に触れちゃうのはなんとなく悔しい気もする、とか、そういう気持ちでしょうか。(……でしょうか、って他人事のように書いてるけど、これはただ単に僕の気持ちだな)
ストーリーは、異物に出会った青年と、その異物を日常のものとして、平然と受け入れている友人のギャップを描くところから始まります。
掘骨砕三の凄味は、一見素朴な線で、想像でしかあり得ないどころか、想像することすら困難なフォルムの幻想生物を、精緻に細密に描き出してしまうところと、日常に芽を出した不思議の種が、蓋然性の高い枝葉を伸ばし、一般常識から遠く離れた、しかし幸せに完成された世界として結実するストーリーテリングの妙にあるのですが、湖のひみつの場合、まずは小手調べというか足場の把握というか、深入りを避けて、軽妙に「不思議な世界」の表層だけをなぞってみせた感じ。グロ描写は無し。細密に描く、という掘骨砕三の特徴は、やや後ろに退いていて、たくさん描く・大きく描くことで代替しようとした様子がうかがえます。
成年作品の掘骨をなまじ知っていると、「違うんだ、掘骨砕三はこんなものじゃないんだ!」とむずむずしちゃう感じはあるですが、これはこれで立派にファンタジー漫画していると思う。肌色が多いのはともかく、それを除けば、普通の(えーと、つまり、RPG系のファンタジーじゃない)ファンタジー系の漫画雑誌に掲載されていてもおかしくない出来です。願望込みだけど、足場の把握が終わったら、もっと凄い作品を描いてくれるんじゃないかな。この先楽しみです。
湖のひみつで興味を持った人には、ぜひ他の掘骨作品を読んでみてほしい。グロ度は恐ろしく高いからかなり人を選ぶけど、最近の作品では、夜に虚就くとひみつの犬神コココちゃんが、完成度が高くておすすめです。あ、成人向けなので、未成年の人は読んじゃ駄目よ。
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参考
- ざっしかんそうぶん
- 雑誌感想アーカイブス:ヤングチャンピオン烈
- えろまんがかんそうぶん
- 掘骨砕三の成人向け単行本レビュー:
- ひみつの犬神コココちゃん (2006/12/5)
- はえてる女の子 (2006/7/20)
- 夜に虚就く (2006/2/21)
- Amazon.co.jpで検索:
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