買ってきたまんがタイムきららフォワードVol.8を読んでいたら、気になる部分があったのでちょっとコメント。
気になったのは吉谷やしよのくろがねカチューシャ。メイド喫茶を舞台にしたギャグ漫画で、語呂合わせとして拷問機具である鋼鉄の乙女が登場するんだけど、ここで主人公の女の子が「『メイド』と『メイデン』こじつけるのは苦しいですよ!!」とコメントするのね。
あれ、世間の人はそういう認識なのか、と、インターネットの集合知の代表格たるWikipediaをチェックしてみたら、「メイド」の項にこういう記述が:
メイド(maid, maid-servant)は、清掃、洗濯、炊事などの家事労働を行う、女性使用人(女中、家政婦、ハウスキーパー、家庭内労働者)を指す。難しい、あるいは重要な仕事を与えられない様な子供がこの仕事に就く事も多かった事から「maid」は少女や処女と言った意味合いも持つが、現代において職業としてのメイドを行っている者は成人女性である場合が殆どである。
(注:強調は引用者による)
使用人としての maid がまず元にあり、そこから少女や乙女を maid と呼ぶ風潮が生まれた、という主張みたい。
だけど、これは違うんです。具体的に言うと逆なんです。歴史的な流れで言うと、少女や乙女がまず maid であり、そこから使用人を maid と呼ぶ流れが生まれたんです。だって、maid という単語は、もともと「少女」「若い女性」を指す maiden の短縮形なんだから。
Oxford English Dictionaryによると、maid という単語が記録に登場したのは、12世紀の終わりごろから13世紀はじめのこと。元になった maiden は11世紀からすでに使用されているので、だいたい2世紀くらい開きがあります。Maid の最初の意味は「女の子」「若い(未婚の)女性」や「処女」で、the Maid of Orleans と言えばオルレアンの乙女、すなわちジャンヌ・ダルクのこと。
使用人の呼称としての maid が記録上に登場するのは、もっとも早い例で1390年、一般的に使用されるようになるのは16世紀以降になってからです。こちらの意味が一般的になるにつれてほかの意味が駆逐されてゆき、現在英和辞典や英英辞典を引くと、「使用人」としての語義が最初に表示されるようになった、という流れ。
また、最初の意味から転じて、聖職者のような、常に性的関係を避けつづける男性を maid と呼ぶこともありました。この用例に従うと、メイド喫茶に通い詰めて萌え萌え連呼する童貞諸氏もまたメイドであり、メイド喫茶は文字通りメイドに埋め尽くされた場であると主張することもできそうですが……。すみません。単なる余談です。