ほんやくメモ:bar girl, B-girl

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【こんなのどうでしょう?】ストリートファイターIV 特典 オリジナルアニメーションDVD「ストリートファイターIV〜新たなる絆〜」付き
ジャンル:
Diary
シリーズ:
ほんやくメモ
種類:
読みもの
最終更新:
2008年12月30日 00時38分
シリアル:
2007-06-15-03

HTMLの番号つきリスト(<OL>)の属性ってどんなだったっけ、とGoogleで検索してみたら、当然と言えば当然だけど、オフィスレディの方の結果が大量に表示されてしもうた。

で、その流れで、なんの気なしにWikipediaのOLの項を読んでいたら、注の部分にこんな文章が:

3. ^ 英語で「売春婦」は prostitute をはじめ、スラングとして call girl、streetwalker、camp follower、whore、hooker など枚挙にいとまがないが、bar girl というものはない。1960年代前半の日本なら「一人でバーに飲みにいくような女はふしだら」と思われたかもしれないが、欧米でそうした偏見は既に1940年代前半にはなくなっていた。

これは、本文の「『女性会社員』を表わすことばとしては、かつては“business girl”の頭文字を取った『BG』[2]というものがあった。しかし『英語で BG は Bar Girl のことで、これは売春婦という意味』という噂[3]が東京オリンピックを翌年に控えた1963年に広まったため、……」という部分に対する注。まるで bar girl という言葉など英語圏には存在しないと言いたげな語調になっているんだけど、いやいや、ありますから! 英英辞典にも載ってますから!

大きめの英和辞典で bar girl を引くと、たいてい「バーのホステス」「女性バーテンダー」「酒場に出入りする売春婦」といった語義が出てきます。英英辞典OEDの場合、 bar の項目に複合語・限定語のひとつとして -girl が登場するだけですが、短縮形の米スラング、B-girl のほうに、"A Woman employed to encourage customers to buy drinks at bar"という定義が出てきます。「酒場で客にお酒を勧める女性」だから、立場としてはホステスさんですね。例文として、F.ArcherのOut of Blue (1966) からの引用が出てくるのですけど、これが面白い。 "If I stand here, I'm a waitress, see? If I sit down, I'm a B-girl", つまり、立っていたらウェイトレスだけど、座ったら B-girl になると言うのです。今日のインターネットにおける用法を調べると、アジア圏、とくに東南アジアのホステスさんを指して bar girl と呼ぶ例が多く見られます。

もっと面白いのが、bar の項目に出てくる bar girl の例文。英ロンドン・タイムズ紙の書評紙、Times literary supplement1963年4月19日号の記事からの引用として、"Changes in postwar Japan: the popularity of `bar-girls', the modern substitute for geisha" なる例文が出てきます。これはどう見ても記事のタイトルで、和訳すると「戦後日本の変化:現代版芸者である`bar-girls' の流行」。TLSは書評紙なので、コロンの前が本のタイトルで、後段が書評者による本の内容の要約ということになるでしょうか。ともかく、1963年かその前年あたりに、戦後日本の風俗、しかも水商売の話題を扱った本が出版されていたか、そうでなくても日本の水商売に関する記事がイギリスの新聞に掲載されていたことになり、ここで、1963年・bar-girl・芸者→売春婦という要素がみごとに繋がったことになります。

ただ、日Wikipediaで解説されている「BG = Bar Girl = 売春婦」の三段論法のほかに、「そもそも business girl が売春婦の隠語であることが後に判明した」説も存在するのがややこしい。しかし、面白いことに、business girl = 売春婦、とはっきりイコールで結んでいるのは、じつは英和辞典だけなのです。英英辞典や英語類語辞典には、売春婦の類語として working girl が出てくるし、business woman も売春婦の隠語として使用されているっぽいけど、business girl は言いかたとしてナシとは言えないまでも、それほどメジャーでは無いらしい。同様に、bar girl のことを、解説で「売春婦である」とはっきり述べているのも英和辞典だけです。

推測を交えながら整理すると、だいたいこういう流れじゃなかったかと思うんです:

  1. 東京オリンピック直前の1962〜3年頃、イギリスあるいはアメリカで、日本の`bar girls'を取りあげた本が出版された。この`bar girls'は風俗産業に従事する女性たちを指す。(推測だが、この本には、いまの日本や欧米のマスコミが、オリンピック直前の中国の「未開」度合いを揶揄するのと同じようなニュアンスがあったのかもしれない)
  2. これこれこういう本が出版されたよという情報が日本に伝わる。これはオリンピックを控えた日本にとって不名誉なこと
  3. 欧米では、`bar girls'は芸者のようなもの、売春婦みたいなものを指すらしいという理解がひろがる
  4. ちょっと待って、日本では職業婦人のことをBGって呼んでるよ!
  5. BGを bar girls の略語だと思われたら、日本は今もってゲイシャの氾濫するセックス天国だと思われて、ますます不名誉なことになる。いえ business girl の略ですと説明したいが、business girl という言葉も売春婦の隠語っぽい。略しているからますます隠語っぽく聞こえる
  6. それに、オリンピックになるとたくさん外国人がやって来るから、このままBGを使い続けていたら、職業婦人の皆さんが悪い外国人に手込めにされちゃうかも! (※異邦人はみんなペニスがおっきいから女の子を取られちゃう症候群)
  7. というわけでBGにかわるあたらしい用語を募集します
  8. BG→OL
  9. 日本の英語学者たちの頭に bar girls/business gurl = 売春婦 という印象が強く残る
  10. その痕跡が、英和辞書の bar girls/business girls の項目に残っている

しかし、"OL"でGoogle検索すると、1ページ目に表示されるサイトのほとんどが男性向けエロサイトになるのはちょっと驚きでした。OLさんのブログが大量に引っかかるとか、OLさんをターゲット層にしたショッピングやコミュニティサイトがトップに来るのかと思いきや。大部分の女性たちにとって、"OL"という言葉は、もはや(……それとも、ずっと?)憧れの姿を提示する最先端の「かっこいい言葉」じゃ無いらしい。あ、でも、「エビちゃんOL」だと結構ブログのヒット率が上がるな。

ともかく、"OL"が、いまだに男性の性的憧憬を掻き立てつづけるマジックワードであることだけはよく分かりました。この状況はパンツとパンティの関係にどことなく似ている気がしないでもない。

参考